六○年ごとに巡ってくるひのえうま(丙午)。一九六六(昭和四一)年には、出生数が前年の四分の三以下に落ち込んだ。丙午生まれの女性は≪気性が荒…く、婚姻に差し障≫る。放火犯八百屋お七が丙午だったので広まった江戸時代の迷信だ。
さて、そのひのえうまが来年。計量社会学者の著者は、前回なぜ顕著な出生減が起きたのか考察する。マスメディアの情報が人びとに影響した。受胎調節が当たり前になっていた。子のいる夫婦が、二子目以降を見送った。前年や翌年に出産をずらす夫婦もいた。そのためがくんと出生数が減った。迷信がそのまま信じられたのではない。これだけ情報が広まると生まれた子が将来不利かもと、親が合理的に心配したのだ。
二○二六年はどうなるか? 顕著な出生減は起きないと著者は予測する。出生数はもう十分低い水準だ。干支(えと)になじみもなくなった。昭和のひのえうまは無事六○歳になっている。イエ制度が弱まり夫婦は気を使わないですむ。説得力ある分析だ。
日本だけの特異な現象だったひのえうま。社会学の立場からデータと理論にもとづき、実態を明らかにした。国際的にも意味ある研究だ。