書評

『音声学者、娘とことばの不思議に飛び込む 〜プリチュワからカピチュウ、おっけーぐるぐるまで〜』(朝日出版社)

  • 2025/05/10
音声学者、娘とことばの不思議に飛び込む 〜プリチュワからカピチュウ、おっけーぐるぐるまで〜 / 川原 繁人
音声学者、娘とことばの不思議に飛び込む 〜プリチュワからカピチュウ、おっけーぐるぐるまで〜
  • 著者:川原 繁人
  • 出版社:朝日出版社
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(280ページ)
  • 発売日:2022-05-25
  • ISBN-10:425501275X
  • ISBN-13:978-4255012759
内容紹介:
人はどうやって声を出しているの? 赤ちゃんはどうやって言葉を身につけるの?子どもの「言い間違い」はどうして起こる? ヒトの進化の過程において、言語はどのように生まれてきたの?言葉… もっと読む
人はどうやって声を出しているの? 赤ちゃんはどうやって言葉を身につけるの?子どもの「言い間違い」はどうして起こる? ヒトの進化の過程において、言語はどのように生まれてきたの?

言葉マニアであり、子育て真っ最中である音声学者が解き明かす、最も身近で不思議な音とことばの世界。

かつて子どもだった人、子どもにかかわる人なら誰もが楽しめる、言語に関する素朴なナゾが解ける一冊。実際の「#我が子のかわいい言い間違い」の音声学的な分析も!

目次
キュアベリーに変身して、世紀の大発見
可愛いやつらは、だいたい両唇音
赤子の魂いつまでも
せっかくだからしっかり音声学入門―子育ての視点を添えて
もう少し深く音声学入門―ラッパーと声優の力を借りて
言語学者夫婦、子どもの言い間違いを直さない
お前もこのかわいさに萌えちまいな
私、発音できないんじゃなくて、しないんです
ねんねしてくれなくてちょべりば
どうやって音を区切るか、それが問題だ〔ほか〕

言語習得の過程から言葉の魅力を改めて知る

ラジオで話す仕事をしているが「感染者数」がうまく言えない。「かんせんしゃしゅう」になってしまう。間違えないようにと思えば思うほど「しゃしゅう」になる。意識せずに読んだほうが「しゃすう」と言える。

言語を習得してきたプロセスを自分自身は知らない。でも、親は知っている。車のことを「ブーブー!」と言っていたのにある時から「くるま!」と切り替えた瞬間には何があったのか。

言語学者が、自分の娘がどのようにして言語を得ていったのかを追いかけながら、言葉の魅力・不可思議さ・懐の深さを知らせる一冊は、言葉の柔軟性を改めて認識する一冊でもある。

子どもは繰り返しを好む。「くらくして」は「くらくらして」、「バドミントン」は「バミトントン」という具合に。今、大人になって新たに言葉を覚える時、もちろん正確にその言葉を把握する。でも、子どもは自分なりの心地よさを優先して覚えようとする。

大ヒットした商品名や作品名に「両唇音」が多いとよく言われる。文字通り両方の唇を使い、一度閉じた唇を破裂させるように発する。著者は娘が好きなアニメ作品『フレッシュプリキュア!』の登場人物にやたらと両唇音で始まる名前が多いことに気づく。「なんと2019年の時点で、名前が両唇音で始まるプリキュアは59人中28人」だった。

「アンパンマン」が「アンバンマン」だったら、「ばいきんまん」が「ぱいきんまん」だったら、善悪の役割が反転してしまいそうだが、言葉は繊細さと大胆さを兼ね備えていて、もしかしたら大人になるにつれて、そういった言葉の魅力を手放しているのかもしれない。言葉って、間違ってはいけないもの、ではなく、付き合い続けるもの、くらいの意識がいいのかもしれない。
音声学者、娘とことばの不思議に飛び込む 〜プリチュワからカピチュウ、おっけーぐるぐるまで〜 / 川原 繁人
音声学者、娘とことばの不思議に飛び込む 〜プリチュワからカピチュウ、おっけーぐるぐるまで〜
  • 著者:川原 繁人
  • 出版社:朝日出版社
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(280ページ)
  • 発売日:2022-05-25
  • ISBN-10:425501275X
  • ISBN-13:978-4255012759
内容紹介:
人はどうやって声を出しているの? 赤ちゃんはどうやって言葉を身につけるの?子どもの「言い間違い」はどうして起こる? ヒトの進化の過程において、言語はどのように生まれてきたの?言葉… もっと読む
人はどうやって声を出しているの? 赤ちゃんはどうやって言葉を身につけるの?子どもの「言い間違い」はどうして起こる? ヒトの進化の過程において、言語はどのように生まれてきたの?

言葉マニアであり、子育て真っ最中である音声学者が解き明かす、最も身近で不思議な音とことばの世界。

かつて子どもだった人、子どもにかかわる人なら誰もが楽しめる、言語に関する素朴なナゾが解ける一冊。実際の「#我が子のかわいい言い間違い」の音声学的な分析も!

目次
キュアベリーに変身して、世紀の大発見
可愛いやつらは、だいたい両唇音
赤子の魂いつまでも
せっかくだからしっかり音声学入門―子育ての視点を添えて
もう少し深く音声学入門―ラッパーと声優の力を借りて
言語学者夫婦、子どもの言い間違いを直さない
お前もこのかわいさに萌えちまいな
私、発音できないんじゃなくて、しないんです
ねんねしてくれなくてちょべりば
どうやって音を区切るか、それが問題だ〔ほか〕

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初出メディア

サンデー毎日

サンデー毎日 2022年8月7日号

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