書評

『青が破れる』(河出書房新社)

  • 2025/05/17
青が破れる / 町屋良平
青が破れる
  • 著者:町屋良平
  • 出版社:河出書房新社
  • 装丁:文庫(184ページ)
  • 発売日:2019-02-05
  • ISBN-10:4309416640
  • ISBN-13:978-4309416649
内容紹介:
ボクサー志望のおれは、友達のハルオから「もう長くない」という彼女・とう子の見舞いへひとりで行ってくれと頼まれる。ジムでは才能あるボクサー・梅生とのスパーを重ねる日々。とう子との距… もっと読む
ボクサー志望のおれは、友達のハルオから「もう長くない」という彼女・とう子の見舞いへひとりで行ってくれと頼まれる。ジムでは才能あるボクサー・梅生とのスパーを重ねる日々。とう子との距離が縮まる一方で、夫子のいる恋人・夏澄とは徐々にすれ違ってゆくが…。第53回文藝賞受賞の表題作に加え二編の短篇、マキヒロチ氏によるマンガ「青が破れる」、そして尾崎世界観氏との対談を収録。

狭い人間関係、3人の死

ボクサーになりたいと思っている主人公の「秋吉」には「とう子」という思いを寄せる人がいる。余命が短い。もう一人、「夏澄(かすみ)」という恋人もいる。彼女は人妻で子どももいる。秋吉には親しい友人がいる。やはりボクサーを目指している……。

人間関係はごく限られている。その狭い関係性の中で、小説は人間の存在の脆(もろ)い部分をふいに掬(すく)い上げる。短い小説の中で、三人もの人が死ぬ。その死を具体的な感情で塗りこめるのではなく、そこにある、何か抽象的なものとして主人公は捉えている。

最後、バタバタと人が死んで、その死を感じることを拒むように、秋吉が「ロードワーク」に出る場面は、出色。第53回文芸賞受賞作。
青が破れる / 町屋良平
青が破れる
  • 著者:町屋良平
  • 出版社:河出書房新社
  • 装丁:文庫(184ページ)
  • 発売日:2019-02-05
  • ISBN-10:4309416640
  • ISBN-13:978-4309416649
内容紹介:
ボクサー志望のおれは、友達のハルオから「もう長くない」という彼女・とう子の見舞いへひとりで行ってくれと頼まれる。ジムでは才能あるボクサー・梅生とのスパーを重ねる日々。とう子との距… もっと読む
ボクサー志望のおれは、友達のハルオから「もう長くない」という彼女・とう子の見舞いへひとりで行ってくれと頼まれる。ジムでは才能あるボクサー・梅生とのスパーを重ねる日々。とう子との距離が縮まる一方で、夫子のいる恋人・夏澄とは徐々にすれ違ってゆくが…。第53回文藝賞受賞の表題作に加え二編の短篇、マキヒロチ氏によるマンガ「青が破れる」、そして尾崎世界観氏との対談を収録。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

初出メディア

日本経済新聞

日本経済新聞 2017年1月5日

  • 週に1度お届けする書評ダイジェスト!
  • 「新しい書評のあり方」を探すALL REVIEWSのファンクラブ
関連記事
陣野 俊史の書評/解説/選評
ページトップへ