書評

松原 隆一郎「2025年 この3冊」毎日新聞|<1>河野 龍太郎『日本経済の死角』(筑摩書房) <2>大西 康之『修羅場の王』(ダイヤモンド社) <3>渡辺 利夫『大いなるナショナリスト 福澤諭吉』(藤原書店)

  • 2025/12/29

2025年「この3冊」

<1>河野 龍太郎『日本経済の死角』(筑摩書房)

<2>大西 康之『修羅場の王』(ダイヤモンド社)

<3>渡辺 利夫『大いなるナショナリスト 福澤諭吉』(藤原書店)


<1>は日本で長期にわたり不況が続いた理由として、企業が過剰に貯蓄し設備に投資しないことを挙げる。実質賃金は上がっていないが日本の生産性は上がっているという矛盾に注目し、「収奪」の内実を明るみに出す。

<2>は債権者・債務者を含むすべてのステークホルダーに粘り強く納得を求め、「法的整理の鬼」と呼ばれる倒産弁護士によるJAL倒産劇を追う。「失敗したらケジメつけてやり直すのが健全な資本主義」なのだとすれば、倒産を先送りする悲観主義が投資に対する悲観の原因とも言える。

<3>は、国家の独立を守る精神の根源を武家社会の士風、士魂に求めたのが福澤諭吉だったとする斬新な福澤論。武士階級を無情に切り捨てた日本が帝国主義者の側に立つ道を選んだのも、排除される側への共感を失ったからなのか。

日本経済の死角 ――収奪的システムを解き明かす / 河野 龍太郎
日本経済の死角 ――収奪的システムを解き明かす
  • 著者:河野 龍太郎
  • 出版社:筑摩書房
  • 装丁:新書(288ページ)
  • 発売日:2025-02-07
  • ISBN-10:4480076719
  • ISBN-13:978-4480076717
内容紹介:
最注目の超人気エコノミストによる快著誕生! 生産性と実質賃金の誤解をはじめ労働法制、企業統治など全く新しい視座から解析する。

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修羅場の王 企業の死と再生を司る「倒産弁護士」142日の記録 / 大西 康之
修羅場の王 企業の死と再生を司る「倒産弁護士」142日の記録
  • 著者:大西 康之
  • 出版社:ダイヤモンド社
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(416ページ)
  • 発売日:2025-10-08
  • ISBN-10:4478115761
  • ISBN-13:978-4478115763
内容紹介:
“経営の神様”稲盛和夫に「JAL再生は、実はこの人がやったんや」と言わしめた男、瀬戸英雄。法的整理の鬼と呼ばれた彼は、政・官・業・労のしがらみを断ち切ってわずか142日でJALを倒産させ、復活への道を拓いた。ゾンビ企業を生み続ける日本に異議を唱え、法と度胸を武器に戦う倒産プロフェッショナルの秘録!

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大いなるナショナリスト 福澤諭吉 / 渡辺 利夫
大いなるナショナリスト 福澤諭吉
  • 著者:渡辺 利夫
  • 出版社:藤原書店
  • 装丁:単行本(264ページ)
  • 発売日:2025-01-28
  • ISBN-10:4865784497
  • ISBN-13:978-4865784497
内容紹介:
「立国の公道」はナショナリズムである

「欧化主義者」「文明開化論者」「啓蒙思想家」に偏った福澤諭吉像を刷新し、現代日本に求められるその思想の核心に迫る!
(本書は海竜社刊『士魂――福澤諭吉の真実』を改題、加筆修正したものです。)

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2025年12月20日

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