書評
『失格社員』(新潮社)
「汝(なんじ)、殺すなかれ」では“部下殺し”と呼ばれる銀行支店長が、「汝、盗むなかれ」では、後輩の業績を横取りする上司が登場。サラリーマンへの十戒をこめた10編を収録、ありえない展開に笑ったり、ずる賢い社員に腹を立てたり、皮肉なラストに唸(うな)ったり。「寓話(ぐうわ)と思って読むうちに、共感にしろ反感にしろ、気持ちが動かされていく。絵空事なのに身近に感じる、その距離感が絶妙」と新潮文庫編集部部長の江木裕計さん。さらには“自分ならどう対処するか”と、ふと考えさせられる。
著者は元銀行員。ハードな経済小説を発表しているイメージも強いが、路線の異なる本書は文庫オリジナルとして昨年4月に刊行。順調な売れ行きに拍車をかけたのは、営業部の河井嘉史さんが作製した書店用パネル。「『あとがきにかえて』に書かれてある、ご自身の銀行員時代の経験や、仕事に対する信念が心に残り、最後の一文を使いたいと思いました」と河井さん。パネルに引用した文は「お客のために、家族のために、そして自分のために働け。決して会社のために働くな」。これを手書きの文字で載せたパネルを置いた書店でよく売れたため、今年の3月にオビにも使用したところ、一気に部数が伸びた。
読者は30〜40代の男性が圧倒的だが、20代の読者は男女半々。働いている世代が中心のため、やはりビジネス街にある書店での勢いがよい。が、意外にも丸の内近辺では比較的低調で、「“合格社員”たちにはピンとこないのか」という冗談も出たとか。いやいや、乗り換え地点となる駅周辺で売り上げがよく、移動途中に気軽に手にするサラリーマンが多い模様。
著者は元銀行員。ハードな経済小説を発表しているイメージも強いが、路線の異なる本書は文庫オリジナルとして昨年4月に刊行。順調な売れ行きに拍車をかけたのは、営業部の河井嘉史さんが作製した書店用パネル。「『あとがきにかえて』に書かれてある、ご自身の銀行員時代の経験や、仕事に対する信念が心に残り、最後の一文を使いたいと思いました」と河井さん。パネルに引用した文は「お客のために、家族のために、そして自分のために働け。決して会社のために働くな」。これを手書きの文字で載せたパネルを置いた書店でよく売れたため、今年の3月にオビにも使用したところ、一気に部数が伸びた。
読者は30〜40代の男性が圧倒的だが、20代の読者は男女半々。働いている世代が中心のため、やはりビジネス街にある書店での勢いがよい。が、意外にも丸の内近辺では比較的低調で、「“合格社員”たちにはピンとこないのか」という冗談も出たとか。いやいや、乗り換え地点となる駅周辺で売り上げがよく、移動途中に気軽に手にするサラリーマンが多い模様。
朝日新聞 2008年6月8日
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