書評
『スターリン―赤い皇帝と廷臣たち』(白水社)
桁外れのリーダーの怖さ
複雑に錯綜する歴史をドラマのように読ませる著者の構成力と筆力に驚嘆する。以前、本欄で紹介したカーショーの『ヒトラー』(上・下)と合わせて読むとなおさら面白い。ヒトラーは凡庸なポピュリストだったが、スターリンは正真正銘の"化け物"だった。
驚くべきことに、スターリンの側近はもちろん、彼に粛清された人々でさえ、独裁者を尊敬していた事実が明かされる。スターリンにひどい目に遭わされた人々でも、独裁者の死に直面して動揺し、喪失感を吐露する。
今から振り返れば、スターリンは20世紀を代表する大悪人といってもよい。しかし、桁外れのリーダーが出てきたとき、どこまで人間社会をコントロールしてしまうのか、その恐ろしさをまざまざと教えてくれる。
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