書評
『タオ―老子』(筑摩書房)
この書物はすっかり気に入った。
『老子』を自由体口語詩に訳した、といえばわかりやすいが、逐語訳の翻訳でも、純粋の現代詩でもない。洗練された詩語に訳された老子の言葉は、砂漠のなかで出会った泉のように心に沁みる。不景気もリストラも年金破綻もどうでもよいことに思えてくる。殺伐としていて、せせこましい現代を生きる人間にとって一服の清涼剤である。
そもそも現代詩に訳した発想が面白い。佐藤春夫の「秋衣の歌」を想起させるが、両者は本質的には違う。タオイストである訳者の理解や解釈が入っているのは言うまでもない。中国人や西洋人の英訳も参考にしているから、現代西洋における老子思想の受容も当然視野に入れられている。
仕事に疲れると、いつも手にして読む。毎回新しい発見があるのは不思議だ。くり返し読んでも飽きないのは、二千五百年前に書かれた古典の魅力か、それとも独創的な翻訳スタイルのためか。いずれにせよ、絶対に後悔させない書物である。
【この書評が収録されている書籍】
『老子』を自由体口語詩に訳した、といえばわかりやすいが、逐語訳の翻訳でも、純粋の現代詩でもない。洗練された詩語に訳された老子の言葉は、砂漠のなかで出会った泉のように心に沁みる。不景気もリストラも年金破綻もどうでもよいことに思えてくる。殺伐としていて、せせこましい現代を生きる人間にとって一服の清涼剤である。
そもそも現代詩に訳した発想が面白い。佐藤春夫の「秋衣の歌」を想起させるが、両者は本質的には違う。タオイストである訳者の理解や解釈が入っているのは言うまでもない。中国人や西洋人の英訳も参考にしているから、現代西洋における老子思想の受容も当然視野に入れられている。
仕事に疲れると、いつも手にして読む。毎回新しい発見があるのは不思議だ。くり返し読んでも飽きないのは、二千五百年前に書かれた古典の魅力か、それとも独創的な翻訳スタイルのためか。いずれにせよ、絶対に後悔させない書物である。
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