書評
『アダム・スミス―『道徳感情論』と『国富論』の世界』(中央公論新社)
【名著 味読・再読】転換期の今こそ読みたい
アダム・スミスといえば『国富論』。中学や高校の教科書で出てきた「神の見えざる手」というフレーズ一発で、スミスを市場万能主義者と誤解している人にこそ読んでもらいたい。人の本性と人の世の本質を見据え、そこから人間行動のメカニズムを解き明かした知的巨人スミス。その本領は『国富論』の17年前に出版された『道徳感情論』にあった。道徳感情の基盤なしには市場メカニズムは機能しない。ここに現在のグローバル資本主義の問題がある。
本書は『道徳感情論』から『国富論』への流れをたどり、スミスの思考の本質部分を鮮やかにえぐり出す。最良の教科書であるだけでなく、きわめて重要な洞察に溢れている。文字通り、蒙を啓かされる。
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