書評
『復元CG 日本の城』(山川出版社)
かなりのリアルさで、どんな城好きも満足
一口に「城が好き」といっても、二通りあるようだ。一つは建築系、一つは土木系。建築系・城マニアは、天守閣や櫓(やぐら)など、近世城郭の建築物が大好き。土木系・城マニアは、石垣や堀、さらには城の縄張りに興味津々。こちらの人々は規模の大きな近世城郭だけでは飽き足らずに、立派な建物がそもそも造られず土塁や空堀で構成された中世城郭まで興味対象を広げていくことが多いように感じる。ぼくは断然、建築系。歴史研究者は土木系であるべし、と頭では理解している。敵の攻撃を防ぐ、という城本来の目的からすると、天守閣などなくてもよい。無用の長物とまでは言わないけれど、間違いなく贅沢(ぜいたく)品ではある。でも、ぼくはどうしても、たとえば寺院の本堂や五重塔が好きなように、城の建築物を見るのが好きなのだ。
とはいえ、多くの城郭建築は明治維新の時に取り壊された。また空襲で消失したものもあり、いまなお存在している天守閣・櫓・門は限られる。地域のシンボルとして建物を復元している、またしたいと願う自治体はあるが、予算との兼ね合いがあり、簡単ではない。また、お上の指導のハードルが高い。イメージで造ってはいけない。きちんと図面なり古写真なりに基づいて正確に復元しなければ、工事の許可は出さない、というのが文化庁の方針になっている。もっともではあるのだが。
そこで本書の出番である。ここに26の城の雄姿が、史料に忠実に、CGを用いて再現されている。天空の城、竹田城。土塁から成る(石垣を使わない)高田城。二つの天守閣が並び立つ米子城などなど、どの城も個性的。この本を手にすれば、簡便に城めぐりの旅に出られる。建築系・土木系問わず、城好きにはたまらない。
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