書評
『ゴッホとモーパッサン―文学と絵画への旅』(皆美社)
文学史にしろ美術史にしろ、我々は影響というものをとかく各々(おのおの)のジャンルに限定して考える傾向があるが、考えてみれば、これは奇妙な態度ではないか。ある画家がある文学者から、どんな画家にもまさる影響を受けることは十分にあり得るし、その逆もまた真だからである。
『ゾラと世紀末』で新しいゾラ像をつくり出すことに成功した著者が、今回ゴッホとモーパッサンを中心にして選んだテーマがこの画家と文学者の相互影響の問題である。モーパッサンは、若き日にノルマンジーの海岸で『嵐の海』を制作しているクールベを見たときの印象から『女の一生』の素晴らしい海の官能的描写を学び、またゴッホは、娼婦との同棲(どうせい)中に読んだゾラの『愛の一ページ』に感激して、以後つねにゾラやモーパッサンの小説を念頭に入れて、傑作を生み出した。そこにはジャンルの違いを越えた同時代的な相同性が観察される。セザンヌやモーパッサンゆかりの土地への紀行文がこれらの興味ある考察を情感ゆたかに彩っている。
【この書評が収録されている書籍】
『ゾラと世紀末』で新しいゾラ像をつくり出すことに成功した著者が、今回ゴッホとモーパッサンを中心にして選んだテーマがこの画家と文学者の相互影響の問題である。モーパッサンは、若き日にノルマンジーの海岸で『嵐の海』を制作しているクールベを見たときの印象から『女の一生』の素晴らしい海の官能的描写を学び、またゴッホは、娼婦との同棲(どうせい)中に読んだゾラの『愛の一ページ』に感激して、以後つねにゾラやモーパッサンの小説を念頭に入れて、傑作を生み出した。そこにはジャンルの違いを越えた同時代的な相同性が観察される。セザンヌやモーパッサンゆかりの土地への紀行文がこれらの興味ある考察を情感ゆたかに彩っている。
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