書評
『男社会がしんどい ~痴漢だとか子育てだとか炎上だとか~』(竹書房)
抑圧と差別と理不尽にあふれる社会を変える
以前、この著者に、自分が担当するラジオ番組に出演してもらったことがある。大手コンビニが成人誌の販売を中止する件を考察した雑誌を編集した著者、その見解に同意しながら議論を進めていた。すると、「どうして武田は、田房の意見に流されているのか。ぶつかっていけ」といった意見がSNSにいくつか流れていた。驚いた。つまり、この手の議論では、女と男は対立する、と決め込んでいたのだ。この本では「男社会」を「男性だらけの職場や組織」ではなく、「男性中心の社会=男社会」と規定する。男性を責めるのではなく、「この理不尽な社会システムを変える」ために、性別や年齢関係なく、男社会のしんどさを考えようというもの。
痴漢被害を訴えれば、警察官に「被害届書いてく? 時間かかるよー?」と言われ、世間は「冤罪(えんざい)のほうが大変だよ」に溢れ、やりすごすことが推奨される。
出産を控えている中で、社会が乱れ打ちしてくる「女の人はそこまでして働かなくていいでしょ」「赤ちゃんがかわいそう」などの声。女性が働けば、「社会進出」「自己実現」などと、いかにも例外的に勝ち取った感じで持ち上げる。でも、そこには、女は基本的に家にいてね、という思いが滲んでいる。
漫画作品ということもあり、とにかく図示による問題整理が明確だ。池の中で溺れそうになっている痴漢被害者。陸でたばこを吸いながらくつろいでいる加害者。溺れないために竹筒が配られる。そこには「犬にかまれたと思え」「服装で挑発してしまったのかも」「自分も悪い」と書かれていた。
黙らせる男社会で、黙ることを覚えざるを得ない女性。理不尽な仕組みの中で、おいしい空気を吸い続けている人たちが読まなければいけない本だ。
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