書評
『ぼくは挑戦人』(ホーム社)
世界中を旅する中で自分を見つけていく
中学時代、外国籍の若い先生がいた。その存在に慣れていなかったヤンチャな中学生の群れは、時に「ガイジン!」などと騒いだ。群れの中に自分もいた。後々、問題視されたが、その時に与えてしまった先生の傷を想像するわけでもなく、問題が大きくなることを怖がっていた。京都府宇治市、在日韓国・朝鮮人が多く住む通称「ウトロ地区」で生まれ、いじめ・差別を受けながら、ジャグリングと出会い、世界を旅する中で自分という存在を発見していく一冊を読みつつ、自分の中学時代の記憶を復活させた。復活させた、ということは、忘れていた、ということだ。
「岡本って『ちょうせんじん』なんやろ?」「岡本って毎日キムチ食ってんのけ?」、徐々にイジメの標的になっていく。やがて、教科書に「ちょうせん人死ね!」「国にかえれ!」などと落書きされるようになった。「自分は生きていたらあかん人間なんや」と思うようになり、いじめられる理由を自分で作ることで納得させようとした。差別を引き受けてしまったのだ。
ジャグリングの腕を磨き、世界的プロパフォーマーとなり、世界を旅する。「どんな人にだって不幸と感じる時があれば、幸福に感じる時だってあることは確かだ」。2012年、彼は、京都で行われたヘイトスピーチのデモ行進の現場に向かい、旭日旗をリュックに突っ込んでいた青年2人に「俺、朝鮮人なんやけど、お前らの目的って何なん?」と話しかけた。結果、その夜、飲み会を開くことになった。一人の青年は「今日が人生で1番楽しいっす」と言った。
「人は共通点・共有点があると、それだけで互いにとって大きな支えとなる存在になれる」。自分の加害を思い起こしつつ、たくましい対話と旅を読みふけった。
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