書評
『「超」入門 失敗の本質 日本軍と現代日本に共通する23の組織的ジレンマ』(ダイヤモンド社)
日本軍と日本企業に共通する弱み
1984年に出た『失敗の本質』は、日本軍がどこをどう間違ったのかについての本。著者は歴史学の戸部良一や経営学の野中郁次郎、組織論の鎌田伸一、戦史研究の杉之尾孝生らで、まさに学際的な仕事だ。単行本(ダイヤモンド社)はベストセラーになったし、現在は中公文庫にも入って読まれ続けている。この名著を現代日本に応用すれば……というのが鈴木博毅『「超」入門 失敗の本質』だ。「超」なのは、やや難解な『失敗の本質』をわかりやすく、という意味。
いやはや、似てますね、日本軍と日本企業。アジア太平洋戦争における日本軍と、バブル崩壊後の日本企業はそっくりだ。そして、両者に共通する弱みは「危機的状況」「転換点」に露呈する。
「本質」というのは、たとえば「戦略性の弱さ」であり「錬磨は得意だけど革新が苦手」ということ。上層部は現場の意見を無視し、リーダーは状況を正しく判断できない。そしてみんな「空気」に押し流される。
実例がたくさん出てくるのでわかりやすい。たとえば第3章「なぜ、『イノベーション』が生まれないのか?」。今年3月期の決算で、パナソニック、シャープ、ソニーがそろって大幅な赤字を出すというニュースから。日本の家電は世界一、というのは昔の話。いいものさえつくれば認められるとひたすら高機能化に邁進したが、世の中(=消費者)の指標はすでに別のところに移っていた。
対照的にすぐれているのがジョブズが率いたアップル。斬新なデザインでパソコンのイメージを一新し、音楽の聴き方や流通を変えた。さらにはスマートフォンで電話まで変えてしまった。個々の技術の洗練度では日本企業が勝っていたかもしれないが、お客の関心は別のところに移っていた。ものづくり(だけ)では、うまくいかないということだ。
ま、世界一なんか目指さないで、コツコツ同じものをつくり続けるのもいいと思うけど。
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