書評
『水の匂いがするようだ: 井伏鱒二のほうへ』(集英社)
気鋭のフランス文学者による井伏鱒二論、と紹介しようとして少し悩む。この本はたしかに井伏鱒二について書いてあるけれど、「論」というよりももう少し柔軟な、誤解を恐れずに言えば、作家へのファンレターに近い。井伏鱒二の小説が大好きな著者は、新しい発見に興奮し、喜び、冗談を言ったりする。井伏を読む野崎歓は、とても楽しそうなのである。
小説と釣りが好きな人は絶対に読んだほうがいいと思うが、私が特に面白かったのは「ドクトル・イブセの翻訳教室」と題された章。井伏が翻訳家として最初の単行本を出したこと、ドリトル先生も翻訳したこと、想像を超えた珍妙な訳語を創出したこと……面白すぎる。
小説と釣りが好きな人は絶対に読んだほうがいいと思うが、私が特に面白かったのは「ドクトル・イブセの翻訳教室」と題された章。井伏が翻訳家として最初の単行本を出したこと、ドリトル先生も翻訳したこと、想像を超えた珍妙な訳語を創出したこと……面白すぎる。