書評
『2020年6月30日にまたここで会おう 瀧本哲史伝説の東大講義』(星海社)
昨年の8月、瀧本哲史が病気で急逝したと聞いたときは驚いた。まだ47歳。エンジェル投資家でもある彼が客員准教授をつとめた京都大学の講義は、立ち見が出るほどの人気だったという。
『2020年6月30日にまたここで会おう』(星海社新書・1078円)は、瀧本が2012年に東京大学でおこなった講義録。表題は、この講義の最後に、8年後、同じ場所での再会を呼びかけたことによる。瀧本のいない今年の6月30日、コロナ禍により東大に集まることはできなかったが、オーディオブック化された本書がネットで無料配信。当日のスライドを見ながら聴く「ゲリラナイト」が敢行され、3800人以上が“結集”したという(ライブ配信はすでに終了、オーディオブックはaudiobook.jpで販売)。
瀧本は学生たちに呼びかける。世界を変えられるのは、カリスマ的指導者などではなく、君たち若者なのだ、と。そのためには、君たち自身が自分で考え、自分で決めること、そして行動すること。
世界を変えるには、意見が異なる人と交渉して、説得しなければならない。たとえば、旧世代である中高年と若者たち新世代の人口比は2対1。ならば、旧世代をひとり説得するだけで情勢は変わるではないか。こう瀧本は挑発する。
交渉とは(論破ではなく)合意するためのもの。交渉するには教養を身につけ、言語の力を鍛えなければならない。教養とは、他の見方や考え方があり得ることを知ることである。
このように、瀧本が学生たちに熱く語るその内容は、きわめて真っ当だ。人生のベテランである旧世代にとっては、真っ当すぎて拍子抜けするかもしれない。だが、一寸先が見えない時代こそ、近道・裏道・抜け道よりも、真っ当な道を進むべきだろう。
講義から8年後、世界はよくなっただろうか。瀧本が生きていたらなんて言うだろう。未来を変えるには、若者たちが真っ当な道を進めるよう環境を整えること。われわれ旧世代にできるのはそれくらいかもしれない。
『2020年6月30日にまたここで会おう』(星海社新書・1078円)は、瀧本が2012年に東京大学でおこなった講義録。表題は、この講義の最後に、8年後、同じ場所での再会を呼びかけたことによる。瀧本のいない今年の6月30日、コロナ禍により東大に集まることはできなかったが、オーディオブック化された本書がネットで無料配信。当日のスライドを見ながら聴く「ゲリラナイト」が敢行され、3800人以上が“結集”したという(ライブ配信はすでに終了、オーディオブックはaudiobook.jpで販売)。
瀧本は学生たちに呼びかける。世界を変えられるのは、カリスマ的指導者などではなく、君たち若者なのだ、と。そのためには、君たち自身が自分で考え、自分で決めること、そして行動すること。
世界を変えるには、意見が異なる人と交渉して、説得しなければならない。たとえば、旧世代である中高年と若者たち新世代の人口比は2対1。ならば、旧世代をひとり説得するだけで情勢は変わるではないか。こう瀧本は挑発する。
交渉とは(論破ではなく)合意するためのもの。交渉するには教養を身につけ、言語の力を鍛えなければならない。教養とは、他の見方や考え方があり得ることを知ることである。
このように、瀧本が学生たちに熱く語るその内容は、きわめて真っ当だ。人生のベテランである旧世代にとっては、真っ当すぎて拍子抜けするかもしれない。だが、一寸先が見えない時代こそ、近道・裏道・抜け道よりも、真っ当な道を進むべきだろう。
講義から8年後、世界はよくなっただろうか。瀧本が生きていたらなんて言うだろう。未来を変えるには、若者たちが真っ当な道を進めるよう環境を整えること。われわれ旧世代にできるのはそれくらいかもしれない。
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