書評
『江戸時代のオタクファイル』(淡交社)
徳川光圀(みつくに)は無類の麺好き。若い頃江戸で流行のうどんを食べ歩き、後年、朱舜水(しゅしゅんすい)に師事すると、本場のラーメンをつくってもらった。…みたいなオタク25名の多彩な群像が満載だ。オタクへの愛が溢(あふ)れている。
江戸の前期/中期/後期から満遍なく、地獄オタク(白隠)、猫オタク(薄雲太夫)、茶屋娘オタク(鈴木春信)、鼠(ねずみ)オタク(定延子(じょうえんし))、のぞき眼鏡オタク(司馬江漢)、麻酔オタク(華岡青洲)、雪の結晶オタク(土井利位(としつら))、歌舞伎オタク(豊姫)…など、いずれ劣らぬ濃い面々が登場。彼らの活躍を書籍で残した江戸の出版文化も素晴らしい。
スマホやAIで時代の先端をゆくつもりでも、この閉塞感は何だ。江戸の人びとはもっと制約が大きいのに自分のこだわりに忠実だった。鬱っぽい若い世代への応援歌だ。
江戸時代は心のルーツ。彼らに共感できれば今をもっと自由に生きられる。そうひらめいた辛酸なめ子さんは、江戸時代のオタク探索の旅に出た。評者も最近、江戸思想12人の評伝を書いたが、最初が徳川光圀。これは偶然かあやかしのわざか。霊感の強い著者に教えてもらおう。イラストも楽しくお買い得である。
江戸の前期/中期/後期から満遍なく、地獄オタク(白隠)、猫オタク(薄雲太夫)、茶屋娘オタク(鈴木春信)、鼠(ねずみ)オタク(定延子(じょうえんし))、のぞき眼鏡オタク(司馬江漢)、麻酔オタク(華岡青洲)、雪の結晶オタク(土井利位(としつら))、歌舞伎オタク(豊姫)…など、いずれ劣らぬ濃い面々が登場。彼らの活躍を書籍で残した江戸の出版文化も素晴らしい。
スマホやAIで時代の先端をゆくつもりでも、この閉塞感は何だ。江戸の人びとはもっと制約が大きいのに自分のこだわりに忠実だった。鬱っぽい若い世代への応援歌だ。
江戸時代は心のルーツ。彼らに共感できれば今をもっと自由に生きられる。そうひらめいた辛酸なめ子さんは、江戸時代のオタク探索の旅に出た。評者も最近、江戸思想12人の評伝を書いたが、最初が徳川光圀。これは偶然かあやかしのわざか。霊感の強い著者に教えてもらおう。イラストも楽しくお買い得である。
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