書評
『朝顔の日』(新潮社)
妻との日常、緻密な描写力で
デビュー作の『指の骨』もそうだったが、まだ30代の作者が書く小説は、戦争を背景にしている。一種の戦争小説と考えていいと思う。ただ、他の若い小説の書き手と圧倒的に違うのは、作者が小説を文字通り手作業で、与えられたピースをこつこつと構築して作り上げるものだと考えているところだろう。
小説の基本は描写である。たぶん作者はそう考えている。高邁(こうまい)な思想も、人の目を驚かすぶっ飛んだ表現もない。
あるのは、緻密な描写力だ。幼馴染(なじみ)の女性と結婚した凛太は、肺を病む彼女をずっと見舞い続ける。その日常を静かな筆致で描く。事物を正確に写し取る力こそ、何よりも小説の魅力なのだ。
ALL REVIEWSをフォローする






























