書評

『ローマ人の心 古代帝国の実像に迫る』(講談社)

  • 2026/06/01
ローマ人の心 古代帝国の実像に迫る / 南川 高志
ローマ人の心 古代帝国の実像に迫る
  • 著者:南川 高志
  • 出版社:講談社
  • 装丁:単行本(344ページ)
  • 発売日:2026-02-12
  • ISBN-10:4065420652
  • ISBN-13:978-4065420652
内容紹介:
「人類が最も幸福だった時代」と後世の歴史家に称された、2世紀のローマ帝国。その最盛期に生きた人々が切実に願っていたのは、愛する家族に囲まれ仕事に誇りをもち、幸せに生きたことを、後… もっと読む
「人類が最も幸福だった時代」と後世の歴史家に称された、2世紀のローマ帝国。
その最盛期に生きた人々が切実に願っていたのは、愛する家族に囲まれ仕事に誇りをもち、幸せに生きたことを、後の世に記憶してもらうことだった。
政治史を中心としてきた著者が、帝国エリートはもちろん、市井の人々や被征服地の民に至るまで、古代人の「思い」に迫る。広大なローマ帝国の統合を支えたのは、彼らのどのような「心」だったのか。
新たな視点から浮かび上がる、巨大帝国の知られざる素顔。
【本書の内容】
序 章 ローマ人の心を碑銘に読む
第1章 ローマ人はどんな世界に生きていたのか
一 ローマ国家の歴史/二 ローマ社会の仕組み/三 ローマ市民の「一日」/四 ローマ市民の「一生」
第2章 帝国エリートたちの生きざま
一 プリニウスの生き方/ 二 元老院議員の理念と生活様式/三 タキトゥスの考え/四 ローマ皇帝の下で生きること
第3章 生と死から見る家族の肖像
一 家族の形とつながり/二 死の習俗と家族/三 家族の外の世界
第4章 属州の人々の心
一 被征服地の変化と住民の心/二 属州支配の進展/三 支配に加わる人々と抗う人々
第5章 平穏な帝国の暮らし
一 平穏な時代のガリア/二 ガリア住民の信仰/三 墓碑や記念碑に見えるアイデンティティと生き方/四 構築された新しいアイデンティティ
終 章 帝国の危機とローマ人の心
同時代の隣人の気持ちであっても分からないことが多いのに、他の時代や地域に生きる人々の心などどうして知れようか。

この難問に毅然(きぜん)ととり組んだ本書はそれだけで傾聴に値する。著者はローマ帝政期の政治史を専門とする歴史家であるが、政治や国家の根底にはそこで生きる人間の「心」が問題であることが気になっていたらしい。

数十年前から社会史研究の拡(ひろ)がりのなかで「心性史」が取り沙汰されていたが、著者の探りたい「心」はそれとは異なり、広大な帝国の統合を支えたものとしてのローマ人の「思い」であった。出自に縛られず社会で上昇できる見通しと希望があれば、生と死をめぐる拠(よ)り所は家族だけではなく家族外の世界にも見出(みいだ)すことができる。

最盛期のローマ帝国において、夥(おびただ)しい数の墓碑、記念碑、肖像が作られた背景には、永遠の憩いに配慮できる時代があったことは忘れるべきではない。少なくとも、「最も幸福だった時代」と人々が伝えようとしていたにちがいない。この「幸福な時代」の指摘は、広大な地域を長期にわたって安定した平和が実現するという人類の願いを考慮すれば、ひときわ重要かつ卓抜な論点を示唆してくれる。
ローマ人の心 古代帝国の実像に迫る / 南川 高志
ローマ人の心 古代帝国の実像に迫る
  • 著者:南川 高志
  • 出版社:講談社
  • 装丁:単行本(344ページ)
  • 発売日:2026-02-12
  • ISBN-10:4065420652
  • ISBN-13:978-4065420652
内容紹介:
「人類が最も幸福だった時代」と後世の歴史家に称された、2世紀のローマ帝国。その最盛期に生きた人々が切実に願っていたのは、愛する家族に囲まれ仕事に誇りをもち、幸せに生きたことを、後… もっと読む
「人類が最も幸福だった時代」と後世の歴史家に称された、2世紀のローマ帝国。
その最盛期に生きた人々が切実に願っていたのは、愛する家族に囲まれ仕事に誇りをもち、幸せに生きたことを、後の世に記憶してもらうことだった。
政治史を中心としてきた著者が、帝国エリートはもちろん、市井の人々や被征服地の民に至るまで、古代人の「思い」に迫る。広大なローマ帝国の統合を支えたのは、彼らのどのような「心」だったのか。
新たな視点から浮かび上がる、巨大帝国の知られざる素顔。
【本書の内容】
序 章 ローマ人の心を碑銘に読む
第1章 ローマ人はどんな世界に生きていたのか
一 ローマ国家の歴史/二 ローマ社会の仕組み/三 ローマ市民の「一日」/四 ローマ市民の「一生」
第2章 帝国エリートたちの生きざま
一 プリニウスの生き方/ 二 元老院議員の理念と生活様式/三 タキトゥスの考え/四 ローマ皇帝の下で生きること
第3章 生と死から見る家族の肖像
一 家族の形とつながり/二 死の習俗と家族/三 家族の外の世界
第4章 属州の人々の心
一 被征服地の変化と住民の心/二 属州支配の進展/三 支配に加わる人々と抗う人々
第5章 平穏な帝国の暮らし
一 平穏な時代のガリア/二 ガリア住民の信仰/三 墓碑や記念碑に見えるアイデンティティと生き方/四 構築された新しいアイデンティティ
終 章 帝国の危機とローマ人の心

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2026年5月23日

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