書評
『頭がいい人、悪い人の話し方』(PHP研究所)
トヨザキ的評価軸:
「金の斧(親を質に入れても買って読め)」
「銀の斧(図書館で借りられたら読めば―)」
◎「鉄の斧(ブックオフで100円で売っていても読むべからず)」
その一、目次を見ると内容がわかってしまう。そのくらいわかりやすくしないと、バカまで手に取らないってことだすわね。だすわよ。その二、矛盾する項目がある。たとえば、「ケチばかりつける」と「人の考えをすぐにうのみにする」の二項目において、何でも批判する人を〈あら探ししかできない〉と否定しておきながら、他人の発言を素直にうのみにする人のことも〈コントロールしやすい〉として小バカにしているんですの。その三、同じことを繰り返す。「他人の権威を笠に着る」と「自分を権威づけようとする」、「感情に振り回される」と「感情の起伏が激しい」などなど。こういう実用書の書き手や編集者って、読者のことをハナからバカにしてて、同じことを噛んで含めて、咀囎しすぎたペースト状にでもしてやらないと理解できないと思ってるんだすわね。だすわよ。
で、中味を見るとベストセラーの鉄則がさらに露わに。それは牽強付会。この本、基本的に「Aのような人はBという性質があるので、Cみたいな話し方をして嫌われる」式の展開になってるんですけど、丁寧に読めばAとBとCがイコールで結ばれる蓋然性などほとんどないケースが多々見受けられるんでございます。で、単純な類型化による決めつけが激しい。〈この種の人は〉〈その種の人によると〉のオンパレード。ためしに任意のページを開いてかぞえてみたところ、見開きで九回、およそ四行に一回「この種」「その種」を連発しておりますの。
そういった事例の後につけてる「対策」がまた笑止千万もの。どんなに聞くに耐えない話し方をする人がいても、それが上司だった場合〈配置転換を希望する〉〈聞き流す〉〈転職を考える〉〈あまり気にしない〉〈放っておこう〉――って、何の対策にもなってねーよ! この本をミリオンセラーに押し上げた百六十五万人のバカに対しては、著者の言葉を借りてこう言っておきましょう。〈できれば、おもしろおかしく書かれたスポーツ新聞や週刊誌のレベルではなく、もっと高度なレベルの本を読むことが好ましい〉。書店や図書館には、いくらでも読まれるべき本が埋もれておりましてよ。
【この書評が収録されている書籍】
「金の斧(親を質に入れても買って読め)」
「銀の斧(図書館で借りられたら読めば―)」
◎「鉄の斧(ブックオフで100円で売っていても読むべからず)」
ぶっちゃけ一文の得にもならねえ駄本なのよ、これが
通信添削による作文や小論文の専門塾を主宰するオッサンが書いた『頭がいい人、悪い人の話し方』が、百六十五万部のミリオンセラーに。今や”会話術の第一人者”としてテレビや週刊誌にひっぱりだこなんですの。でも、ぶっちゃけ一文の得にもならねえ駄本なのよ、これが。四章四十項目からなる目次だけでベストセラーのだめぇな特徴が幾つか判明いたしますんで。その一、目次を見ると内容がわかってしまう。そのくらいわかりやすくしないと、バカまで手に取らないってことだすわね。だすわよ。その二、矛盾する項目がある。たとえば、「ケチばかりつける」と「人の考えをすぐにうのみにする」の二項目において、何でも批判する人を〈あら探ししかできない〉と否定しておきながら、他人の発言を素直にうのみにする人のことも〈コントロールしやすい〉として小バカにしているんですの。その三、同じことを繰り返す。「他人の権威を笠に着る」と「自分を権威づけようとする」、「感情に振り回される」と「感情の起伏が激しい」などなど。こういう実用書の書き手や編集者って、読者のことをハナからバカにしてて、同じことを噛んで含めて、咀囎しすぎたペースト状にでもしてやらないと理解できないと思ってるんだすわね。だすわよ。
で、中味を見るとベストセラーの鉄則がさらに露わに。それは牽強付会。この本、基本的に「Aのような人はBという性質があるので、Cみたいな話し方をして嫌われる」式の展開になってるんですけど、丁寧に読めばAとBとCがイコールで結ばれる蓋然性などほとんどないケースが多々見受けられるんでございます。で、単純な類型化による決めつけが激しい。〈この種の人は〉〈その種の人によると〉のオンパレード。ためしに任意のページを開いてかぞえてみたところ、見開きで九回、およそ四行に一回「この種」「その種」を連発しておりますの。
そういった事例の後につけてる「対策」がまた笑止千万もの。どんなに聞くに耐えない話し方をする人がいても、それが上司だった場合〈配置転換を希望する〉〈聞き流す〉〈転職を考える〉〈あまり気にしない〉〈放っておこう〉――って、何の対策にもなってねーよ! この本をミリオンセラーに押し上げた百六十五万人のバカに対しては、著者の言葉を借りてこう言っておきましょう。〈できれば、おもしろおかしく書かれたスポーツ新聞や週刊誌のレベルではなく、もっと高度なレベルの本を読むことが好ましい〉。書店や図書館には、いくらでも読まれるべき本が埋もれておりましてよ。
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