書評
『禅が教えてくれる 美しい人をつくる「所作」の基本』(幻冬舎)
物を大切にすれば“美しい所作”になる
面接は部屋に入った瞬間にもう結果が決まっている、という話を聞いたことがある。ことの真偽は不明だが、納得できる。背中を丸めてあごを突き出し、両足をひきずるように、いかにもかったるそうに歩いてくる応募者は落ちるだろう。ぼくが面接者なら落とす。路上、電車の中、カフェ。見回すと、姿勢の悪い人が多い。若者だけじゃない。中高年も相当ひどい。景気が悪いというけど、みんな小ぎれいな服を着ている。でも姿勢が悪いので台無しだ。
人のふり見てわがふり直そう、というわけで枡野俊明の『禅が教えてくれる 美しい人をつくる「所作」の基本』を購入した。
著者は禅寺の住職にして庭園デザイナー。美大の教授でもある。大使館やホテルの庭園も手がけたそうだ。『禅、シンプル生活のすすめ』など、禅をキーワードにしたライフスタイル系自己啓発書もたくさん書いている。
禅というのは日常生活のすべてが修行だ。無駄なく、シンプルに。それが所作=立ち居振る舞いを美しくし、やがては心の平安をもたらすのだという。
「なるほど」と思うことがたくさん書いてある。たとえば「イライラしている人に、所作の美しい人はいない」。たしかにそうだ。つけ加えるなら、慌てたりセカセカしている人も。ゆったり、のんびりするだけで、所作は美しくなる。あと、背筋を伸ばして深く腹式呼吸をすれば、かなり改善できる。
「箸や器を大切に使えば、自然と美しい所作になる」というのも納得できる。もちろんナイフとフォークでも同じ。いや、食器にかぎらずボールペン一本でもそうだ。きちんとていねいに使おうとすれば所作は美しくなる。逆にいうと、だらしなく見えるのは、物の扱いがぞんざいなんですな。
ところで疑問がひとつ。ぼくは京都などの有名な禅寺によく参拝するのだけど、見かける僧侶たちの所作が必ずしも美しいと限らないのはなぜなのだろう。
ALL REVIEWSをフォローする





































