書評
『すべて真夜中の恋人たち』(講談社)
男女の交流、きれいに掬いあげ
もう各紙誌で話題になっている川上未映子の新刊だ。今回は、いわゆる非モテ系の男女の交流が描かれる(ALL REVIEWS事務局注:本書評執筆時期は2011年11月)。主人公はフリーランスの校閲者。自宅で仕事をしている。だが徐々に精神のバランスを崩しかける。ある日、自分を鼓舞して出かけたカルチャースクールで、高校の物理の教師だという中年の男性(三束さん)と出会う。だが、2人の関係はぜんぜん進展しない。
喫茶店で話をするだけの2人。それも約束の時間さえ間遠で、ときどき会って話をする程度。読者はイライラのしっぱなしなのだが、そんな2人でも少しずつ少しずつ距離を縮めていく。
ラスト近く。2人はフランス料理店で食事する。その後、歩いて散歩する。この場面がいい。詩である。詩集を読んでいるような気がする。川上の筆は2人の関係の淡さ、はかなさをきれいに掬(すく)いあげている。
前作『ヘヴン』ほどリアルではないかもしれない。しかし川上未映子は確実に小説家として前進している。
私は初出誌で読んだが、単行本ではさらに手が入り、三束さんも非モテの男性だったことが明確に。今年、記憶に残る一冊。
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