書評
『ドラえもん世界の国旗全百科』(小学館)
ドラえもんと国旗の旅へ
絵本の読み聞かせは、まったく苦にならないが、けっこう疲れるのがマンガだ。息子はドラえもんが大好きで、しょっちゅう「読んで、読んで」とせがまれる。私のいとこの古い物置から発掘(?)された、コミック30巻以上を譲(ゆず)り受けたものだから、読んでも読んでも、まだまだある(ALL REVIEWS事務局注:本書評執筆時期は2008年)。テレビアニメの声色を真似て、ドラえもんやのび太、ジャイアン、スネ夫、しずちゃん……と、セリフごとに声を変えることにしているのだが、これが大変だ。マンガというのは、あたりまえだが、ほとんどセリフでできている。最初のうちは、しずちゃんの声でジャイアンのセリフを読んでしまったりして、やり直し……なんていうこともあった。今どのコマを読んでいるかわからないようなので、指で押さえて「ここを読んでるからね。そのときは、この絵を見るんだよ。次はその下にいくからね」という指導も必要だ。
が、そのうちすっかりマンガの文法に慣れてしまい、「自分で読む」と言いだした。最近では、寝る前と朝一番にドラえもんを読むのが、息子の日課になっている。コツを覚えてしまうと、マンガというのは実に読みやすいようだ。
本当にわかっているのかなあと思って、横目で観察していると、ときどきニヤ~と笑ったり、険しい表情になったり(たぶん、のび太がいじめられているのだろう)している。「さようなら、ドラえもん」という話を読んだときには、涙をぼろぼろこぼして泣いていた。
そんな息子の様子を聞いて、叔母がプレゼントしてくれたのが『ドラえもん世界の国旗全(オール)百科』だ。前回この欄で「今『せかいのこっき』を眺めるのが趣味」と書いたことを、覚えていてくれたらしい。
美しい国旗とともに、その国の簡単な紹介や、国旗の由来が記されている。ドラえもんたちが世界の国々を旅するマンガが理解を助け、また地球が今抱えているさまざまな問題(戦争、温暖化、人種差別など)も、コラムとしてわかりやすく書かれている。
綺麗な旗を、カードのように眺めているのと違って、「国」という実体と結びつけながら見つめることは、大人の私にとっても、興味深い。
ショックだったのは、実に多くの国旗の赤色が、国のために流された人々の「血」を意味しているということだ。アフガニスタン、アルメニア、クウェート、ベトナム、モルディブ、ガーナ、チリ……あらゆる地域の国々の旗に、その血の色は刻まれている。
ドラえもんに導かれ、ますます旗好きになった息子。お子様ランチについていた星条旗を持ちかえり、この本で一所懸命調べていた。もうすぐ始まるオリンピックでも、大活躍しそうな一冊だ。
ドラえもんのいないのび太と思うとき贈りたし君に夢の木の実を
【この書評が収録されている書籍】
朝日新聞 2008年7月30日
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