書評
『文庫本は何冊積んだら倒れるか』(本の雑誌社)
好きすぎるがゆえの深すぎる探究心
本が好きな者同士で話していると、本の内容だけではなく、触り心地がいいとか、漬物石の代わりに最適な厚さだとか、古本に挟まっていたレシートの詳細に笑っただとか、内容から逸れた話に派生していく。それは無駄話ではなく、本を愛しているがゆえの大切なテーマなのだ。本書は、その手のテーマに、読者の要求以上に応えている。本のタイトルにあるように、どこまで積み上げられるかという実験に取り組み(果たして49冊を記録した文庫レーベルはどこか!?)、文庫を左手だけで読んでみたらどこまでいけるかに挑戦し、新書のタイトルの長さを調べて平均値を出してみる。
本を手にした時の高揚感は人それぞれで、その高揚感をうまいこと言い表すことって難しい。今はタブレットでも読めるよね……なんて言われると、いや、「この感じがいいんじゃん」と本を丸ごと褒める。具体的に説明できていないのに、「だって、そうでしょ」と強がってしまう。
文庫本とは「万人の必読すべき真に古典的価値ある書をきわめて簡易なる形式において逐次刊行」されるもの、と岩波文庫に書かれているという。そこまで高尚なものが親しみやすいものとして出されていたとは知らなかった。そんな文庫を著者は、カバーを外して裸にし、どの文庫の裸がいいかをランキングにして熱弁する。古典的価値ある書を、簡易なる形式で分析してくれているのである。
タイトルと印象の違う小説を読んでみたり、50年ぶりに訳された『ボヴァリー夫人』の訳を比べてみたりする。そういった本の内容についての探求も面白いのだが、やっぱり歴代の本屋大賞を並べ、その重量をグラフにしてみたりするほうに惹かれてしまう。なぜって、本という物体が闇雲に好きだからである。
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