書評
『生還』(文藝春秋)
滑稽さとすごみある闘病記
生きるか死ぬかの1週間を経たあと、小林信彦は長く入院することになる。脳梗塞だった。面識もあった、好きな役者や作家たちが「わからぬ形で」消えていくことがあり、それが後になって脳梗塞だとわかることがある、と著者は自分の病気を分析してみせる。一方で、オシッコのことで担当の看護師とうまくいかなくなったり、長くベッドで寝ているので、人間を斜め下から鼻で判断するようになったりもする。ニコール・キッドマンの鼻が「もっとも好ましい」と書いていて、思わずニヤリとしてしまう。
闘病記である。だが、もちろんただの闘病記ではない。重病を患う人間と、その周りの人々との会話に諧謔と凄みがある。
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