書評
『骨踊り』(幻戯書房)
多層化する語りの荒々しさ
向井豊昭という作家をご存じだろうか。2008年に亡くなったが、没後、彼の小説をめぐって複数の批評家が可能性を掘り下げる文章を書いてきた。本書は、向井の初期の傑作短編『脱殻』(カイセイエと読む)、『鳩笛(はとぶえ)』をはじめ、代表作『BARABARA』へ直接結びつく中編『骨(こつ)踊り』を収録した。それら以外に、フランス文学者・平岡篤頼氏の講演「フランス小説の現在」をも収める。向井が最も影響を受けたと告白しているものだ。
アイヌ民族をめぐる諸問題とヌーヴォー・ロマンと、そして私小説と。意想外の組み合わせであるそれらは、多層化する語りの中で見事に混ぜ合わされ、荒々しいまま小説の中で息づいている。
ALL REVIEWSをフォローする







































