書評
『愛すること、理解すること、愛されること』(河出書房新社)
苦渋の周りを回る言葉
著者の李龍徳は、シンプルそうに見える人間関係に、突然、深い亀裂を作り出して、読者を引き込む。デビュー作の『死にたくなったら電話して』もそうだったが、その世界観は深化している。軽井沢の別荘に集まった男女の4人。大学時代からの知り合いである彼らを招いたのは、共通の知り合いの女性の妹。その姉は、自殺していた。
とにかく会話しかない小説。楽しそうにイタリアンを作ったり、酒を呑んだりしている最中もずっと話をしているが、彼らの言葉は独特で、人が生きて経験する苦渋の周りをぐるぐると回っている。人間は言葉の動物だ。軽やかで、ちょっと哀感ただよう佳作。李龍徳、ご注目を。
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