書評
『遠い触覚』(河出書房新社)
偉大な寄り道のエッセー
保坂和志さんのエッセイには、小説家の中の混沌を説明しようとする姿勢が見えて、こちらもちょっと身構える感じがあった。この新刊のエッセイにはその気配が薄い。デイヴィッド・リンチの映画『インランド・エンパイア』のほうへ行こうとして、レオポルド・ルゴーネスという作家について延々と書いてしまったり(この作家、本当に凄(すご)い……)、長く家にいた猫の死について書いたりする。つまり、これは偉大な寄り道の本なのである。厖大(ぼうだい)な作家や映画や思想書や音楽の固有名と、それらについての短いが、的を射た保坂さんの意見が渦巻いて、私たちの前に現れる。ああ、また翻弄されているなぁと思うけれど、つい読んでしまう。癖になる一冊。
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