書評
『浦からマグノリアの庭へ』(白水社)
ユーモアたっぷりに文学語る
作家であり、フランス語圏文学の研究者である小野正嗣、初のエッセイ集である。あまり大声では言えないが、小野さんは快活な人である。冗談、ギャグ、ボケを連発する。個人的なつきあいの中に見える彼の人格的な面白さは、じつは彼の小説には、それほど投影されていない。彼の小説は、たくらみに満ちているし、小説言語に対する厳しい視線が内在しているからだろう。
できれば彼のキャラの面白さが発揮された文章を読んでみたい、とつねづね思っていた。そしてエッセイにはそれが存分に示されていると思う。楽しい読書だった。
なによりも、「浦からマグノリアの庭へ」という、表題にもなっているエッセイから読まれたい。
大分県の「浦」のついた土地に生まれ、東京の大学へ進み、フランスへ留学し、小説を書く。郊外に留まり、「暴動」を呼吸する。そうした一連の流れが、独特の諧謔(かいぎゃく)を伴って記述されている。幾度も腹を抱えて笑った。また、不意を突かれて考え込んだ。
これだけ広範な知識を有し、自在に文学を語ることができる人間が、いまどき他に何人いるだろう。
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