書評
『ちいさな城下町』(文藝春秋)
地域の城址に歴史訪ねる
イラストレーター、安西水丸の、城下町をめぐるエッセイ集。城下町について、冒頭、安西はこう述べている。旅の楽しみの一つとして、何処(どこ)か地図で城址(じょうし)を見つけ、そこを訪ねることがある。たいていの城下町には城址があるわけだが、ぼくの城下町の好みは十万石以下あたりにある。そのくらいの城下町が、一番それらしい雰囲気を今も残している。
安西の好みがわかる一文だ。大きな天守閣や、後年作った近代的な城には興味がない。裕福ではなかったに違いない地方の藩の城址から、過去の出来事を推察する。
ただ思いを巡らすだけではない。城下町めぐりをする人には2種類の人がいる(と、安西は書く)。歴史に興味を持つ人と、町並みを眺め美味(おい)しいものを食べ歩くタイプの人。安西は前者。どの城下町に行っても、その藩に起こった歴史の詳細な記述が、結構な分量を占める。
村上市(新潟県)、中津市(大分県)、亀山市(三重県)などが特に心に残った。冒頭の村上市の記述では、盟友の村上春樹もちょっとだけ出てくる。3月に急逝した著者による最後のエッセイ。
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