書評
『ふぉとん叢書001 雪の下の夢 : わが文学的妄想録』(冬花社)
読者に迫る吟味された言葉
副題が「わが文学的妄想録」。妄想というのは、三木さん流のテレだと思うが、とにかくこの本には、長く小説と詩を書いてきた人間にしか到達することのできない境地が浮かび上がっている。女性、音楽、今の文学、批評、教育。扱っているテーマの幅が広い、というわけではない。三木さんの手の届く範囲で、十分に吟味された言葉が書きつけられている。そこがすがすがしい。
たとえば、恋愛小説について。恋愛というありきたりのものを「ひとつの恋愛として時空に言葉によって描き出す」ことは、ほとんど不可能だ、と三木は書く。そしてこのことは現代小説全般について言える。
だがここまでなら誰もが指摘することで、三木はその先にいる。それでも人は書くのだ、と。書いて、反古(ほご)の山を作る。それでも書くのだ。「多分、今までもそうして書かれて来た。そしてこれからもそうなる」。
決して強い断言というわけではない。だが経験に裏打ちされた言葉は、不思議なしなやかさと強さを持って、読者に迫ってくる。作家の書くエッセイって、こんな味わいだったな、と不思議な懐かしささえ感じた。
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