書評

『ぬるい毒』(新潮社)

  • 2026/09/17
ぬるい毒 / 本谷 有希子
ぬるい毒
  • 著者:本谷 有希子
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:文庫(159ページ)
  • 発売日:2014-02-28
  • ISBN-10:4101371733
  • ISBN-13:978-4101371733
内容紹介:
あの夜、同級生と思しき見知らぬ男の電話を受けた時から、私の戦いは始まった。魅力の塊のような彼は、説得力漲る嘘をつき、愉しげに人の感情を弄ぶ。自意識をずたずたにされながらも、私はやがて彼と関係を持つ。恋愛に夢中なただの女だと誤解させ続けるために。最後の最後に、私が彼を欺くその日まで――。一人の女の子の、十九歳から五年にわたる奇妙な闘争の物語。渾身の異色作。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

主人公の強烈な内省的意識

先週行われた芥川賞の選考は残念な結果に終った。「該当作ナシ」。本谷有希子は本作で候補になっていた。

高校の頃はさしてパッとしたところのなかった主人公・熊田由理は地元の短大に進み、垢(あか)抜けた感じになっている。

ある正月。帰省中の、高校時代にお金を借りたという向伊が電話をかけてくる。向伊は東京の大学に通っている。ほとんど記憶にない男からの電話にうろたえるけれど、正月にしかかかってこない電話に過剰な思いを抱いていく主人公。二人は付き合うことになるのだが……。ここまでのトーンが後半になるや激変する。向伊という男がまったく信頼に足らぬ人間だということが判明し、地獄へまっさかさま……。

本谷さんの小説を特徴づけているのは、主人公の強烈な内省的意識である。基本的に一人称が用いられている本作でもそれは変わらない。

相手を嫌悪し、憎み、同時に愛し、いとおしむ。感情のデパートのような女性の内面を描かせたら、本谷さんの右に出る者はいない。表題の「毒」は他ならぬ自分の吐く毒である。充分に愉(たの)しめる小説に仕上がっていると確信した。
ぬるい毒 / 本谷 有希子
ぬるい毒
  • 著者:本谷 有希子
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:文庫(159ページ)
  • 発売日:2014-02-28
  • ISBN-10:4101371733
  • ISBN-13:978-4101371733
内容紹介:
あの夜、同級生と思しき見知らぬ男の電話を受けた時から、私の戦いは始まった。魅力の塊のような彼は、説得力漲る嘘をつき、愉しげに人の感情を弄ぶ。自意識をずたずたにされながらも、私はやがて彼と関係を持つ。恋愛に夢中なただの女だと誤解させ続けるために。最後の最後に、私が彼を欺くその日まで――。一人の女の子の、十九歳から五年にわたる奇妙な闘争の物語。渾身の異色作。

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初出メディア

日本経済新聞

日本経済新聞 2011年7月20日

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