書評

『身も心も』(光文社)

  • 2026/09/15
身も心も / 盛田 隆二
身も心も
  • 著者:盛田 隆二
  • 出版社:光文社
  • 装丁:単行本(211ページ)
  • 発売日:2011-06-18
  • ISBN-10:4334927645
  • ISBN-13:978-4334927646
内容紹介:
七十五歳になる道久礼二郎は、六年前に妻を脳溢血で失った。ただ威張り腐っているだけのダメ亭主だったが、女房は文句を言わずに尽くしてくれた。生前ありがとうの言葉ひとつかけてやれなかっ… もっと読む
七十五歳になる道久礼二郎は、六年前に妻を脳溢血で失った。ただ威張り腐っているだけのダメ亭主だったが、女房は文句を言わずに尽くしてくれた。
生前ありがとうの言葉ひとつかけてやれなかったことが悔やまれる日々が続く。いっときは「要介護1」の認定がでるまでに心身は衰弱した。
息子夫婦と同居し生活援助を受け、洗顔と入浴と着替えの習慣がつくと、やがて一人で妻の墓参にも出掛けられるようになった。

嫁が申し込んで、嫌々ながらも、老人クラブの絵画同好会に入会した。
六十代後半が中心で礼二郎は四番目に高齢だった。彼は、六十四歳の岩崎幸子と知り合う。エキゾチックな顔立ちや上品な笑みにも増して、身のこなしの軽やかな華やかな人だった。
礼二郎の辛い話を、彼女は親身になって聞いてくれた。

二人が親密さを増したころ、内緒で買った携帯電話のメールのやりとりを息子夫婦に見られてしまった。
その女性とはどのような関係で、何をしている人かと問い質された。その後、二人の会話が聞こえてしまう。親父名義の土地を生前贈与したほうがいいかと話していた。
礼二郎は幸子に、なぜこんな老いぼれの相手をしてくれるのかと訊ねる。「そんな言い方、やめてください」と幸子は言って、彼女は凄まじい過去を語り出した。

──制限時間迫る、高齢者の物語が炙り出すのは、究極の恋愛か。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

老境の執着、緻密な筆致で

6人の作家が同じテーマで競作するシリーズの一冊。テーマは「死様(しにざま)」。重いが避けて通れない主題だ。

盛田隆二は『身も心も』という意味深長なタイトルの小説の中で、老人の性と生への執着を緻密に描いている。

妻を数年前に脳梗塞で亡くし、息子夫婦と同居している主人公・礼二郎は、家を出たがらない75歳。家族の者から背中を押されるようにして参加した絵画サークルで、11歳年下の岩崎幸子と出会う。なんとなく惹(ひ)かれあう2人だったが、幸子にはとても1人では抱え切れないほどのつらい過去があった……。

小説は、前半、2人の恋を中心に動く。手を取り合うだけで幸福感に満ちる逢瀬。だが幸子が自分の過去を打ち明けるあたりから、小説は別の世界へ移行する。

幸子の長い打ち明け話を聞いた礼二郎が脳梗塞に倒れる。小説の後半は、礼二郎が2度の脳梗塞に見舞われつつ、リハビリを続ける姿を、礼二郎の意識に即して描く。

特に後半が身につまされる。病気やリハビリ中の両親を抱える世代はもちろん、自身が老境に差しかかった人々には、圧倒的なリアリティをもった小説。
身も心も / 盛田 隆二
身も心も
  • 著者:盛田 隆二
  • 出版社:光文社
  • 装丁:単行本(211ページ)
  • 発売日:2011-06-18
  • ISBN-10:4334927645
  • ISBN-13:978-4334927646
内容紹介:
七十五歳になる道久礼二郎は、六年前に妻を脳溢血で失った。ただ威張り腐っているだけのダメ亭主だったが、女房は文句を言わずに尽くしてくれた。生前ありがとうの言葉ひとつかけてやれなかっ… もっと読む
七十五歳になる道久礼二郎は、六年前に妻を脳溢血で失った。ただ威張り腐っているだけのダメ亭主だったが、女房は文句を言わずに尽くしてくれた。
生前ありがとうの言葉ひとつかけてやれなかったことが悔やまれる日々が続く。いっときは「要介護1」の認定がでるまでに心身は衰弱した。
息子夫婦と同居し生活援助を受け、洗顔と入浴と着替えの習慣がつくと、やがて一人で妻の墓参にも出掛けられるようになった。

嫁が申し込んで、嫌々ながらも、老人クラブの絵画同好会に入会した。
六十代後半が中心で礼二郎は四番目に高齢だった。彼は、六十四歳の岩崎幸子と知り合う。エキゾチックな顔立ちや上品な笑みにも増して、身のこなしの軽やかな華やかな人だった。
礼二郎の辛い話を、彼女は親身になって聞いてくれた。

二人が親密さを増したころ、内緒で買った携帯電話のメールのやりとりを息子夫婦に見られてしまった。
その女性とはどのような関係で、何をしている人かと問い質された。その後、二人の会話が聞こえてしまう。親父名義の土地を生前贈与したほうがいいかと話していた。
礼二郎は幸子に、なぜこんな老いぼれの相手をしてくれるのかと訊ねる。「そんな言い方、やめてください」と幸子は言って、彼女は凄まじい過去を語り出した。

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初出メディア

日本経済新聞

日本経済新聞 2011年6月29日

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