書評
本村 凌二「2025年 この3冊」毎日新聞|<1>エマニュエル・トッド、荻野 文隆訳『世界の多様性―家族構造と近代性<普及版>』(藤原書店) <2>L・D・レノルズ、N・G・ウィルソン、西村 賀子、吉武 純夫訳『古典の継承者たち』(筑摩書房) <3>デイヴィッド・ポッター、井上 浩一訳『テオドラ―女優からビザンツ皇后、聖人へ』(白水社)
2025年「この3冊」
<1>エマニュエル・トッド、荻野 文隆訳『世界の多様性―家族構造と近代性<普及版>』(藤原書店)
<2>L・D・レノルズ、N・G・ウィルソン、西村 賀子、吉武 純夫訳『古典の継承者たち』(筑摩書房)
<3>デイヴィッド・ポッター、井上 浩一訳『テオドラ―女優からビザンツ皇后、聖人へ』(白水社)
<1>議論の核心は、家族システムをめぐって、全世界規模での分布を確定し、それらの変遷をたどり、そこに生きる人々の心性との関係を見出(みいだ)すことにある。既存書の普及版であるが、今なお新知見が散らばっており、二十一世紀の古典とも言えるだろう。
<2>ギリシア語とラテン語の文献が保存されてきた流れをたどり、この写本の時代に前近代の学者や読者が古典文献の保存と伝承に興味をいだいていたかを理解させてくれる。初心者向けの入門書として書かれ、ありがたい。
<3>六世紀、民衆の反乱があり、逃げようとしたユスティニアヌス帝に妃テオドラは「帝位は輝かしい死装束です」と口を挟む。彼女は若き日の拙い自分を助けた人々に誠心誠意をもって応じたという。分かりやすい歴史研究書、説得される。
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