書評
『指導者とは』(文藝春秋)
ニクソンの観察眼に学ぶ
米国のリチャード・ニクソンといえば、強欲で狷介(けんかい)、権力欲むき出しで目的のためには手段を選ばない下品な政治家というイメージが付きまとう。僕もそう思っていたが、本書を読んでびっくりした。大変な知性である。取り上げるのは、チャーチル、ドゴール、マッカーサーなど、過去に数多く語られてきた指導者ばかり。著者の強みは、実際に彼らと一緒に仕事をし、直接その目で観察したところにある。例えば、日本の戦後復興を共作したマッカーサーと吉田茂についての細部にまで目配りの利いた記述などは感動すら覚える。一国の命運が双肩にかかる状況で仕事をせざるを得なかった指導者についての"切れば血が出るような生々しい洞察"は、凡百の指導者論とはスケールが違う。
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