書評
『待つこと、忘れること?』(平凡社)
あの金井美恵子の食にまつわるエッセイ。というだけで読む人は読むのだし、“あの”の意味もわからない人は『ビストロSMAP』でも買って読めばいいと思う今日この頃。(ALL REVIEWS事務局注:本書評執筆時期は2003年)しかし、ブックレビュー欄なのだから、この作家を不幸にも知らない人にも薦めるのが務めといえば務めというわけで、たとえば、こんな文章を引いてくることにしましょう。
読んで思わずニヤリとするあなたなら、このエッセイ集の良い読者になれるはずです。
作家として超一流なのは言うまでもなく、生活人としても気骨溢れるまっとうさを示す金井氏が、本書の装幀とイラストを担当している実姉・久美子氏との暮らしの中で食しているメニューの数々を紹介。こんなに贅沢な一冊もありません。豚肉の中国風お茶漬け、ヨーグルトの冷製スープ、フェニックス風カレー、ニンニクとトリの丸焼き、ナスのシャチ煮、ズシコのジャジャ麺etc。読んでいるうちに涎が口の中でツユだく状態になること必定。しかも、プルーストのマドレーヌじゃありませんが、味覚は記憶を甦らせ、料理の話がいつしか母の思い出へとシフトしていくのです。その流れるような文章の美しさ! 甦るのは記憶だけじゃありません。『ボヴァリー夫人』といった文学作品もまた、料理する徒然に思い出されるのです。時折ふいに顔を覗かせる、氏独特の意地悪かつ絶妙な人物&時事批評もスパイスとして極上の味わい。何度も言いますが、こんな贅沢な逸品もないのです。
【この書評が収録されている書籍】
私の文章を読んで、(料理を=筆者註)作ってみようと思って作れなかった、という人がいたとしたら、その人は『生活』というもののあれこれに対する基本中の基本が身についていない、というだけで、私の文章のせいではありません。
読んで思わずニヤリとするあなたなら、このエッセイ集の良い読者になれるはずです。
作家として超一流なのは言うまでもなく、生活人としても気骨溢れるまっとうさを示す金井氏が、本書の装幀とイラストを担当している実姉・久美子氏との暮らしの中で食しているメニューの数々を紹介。こんなに贅沢な一冊もありません。豚肉の中国風お茶漬け、ヨーグルトの冷製スープ、フェニックス風カレー、ニンニクとトリの丸焼き、ナスのシャチ煮、ズシコのジャジャ麺etc。読んでいるうちに涎が口の中でツユだく状態になること必定。しかも、プルーストのマドレーヌじゃありませんが、味覚は記憶を甦らせ、料理の話がいつしか母の思い出へとシフトしていくのです。その流れるような文章の美しさ! 甦るのは記憶だけじゃありません。『ボヴァリー夫人』といった文学作品もまた、料理する徒然に思い出されるのです。時折ふいに顔を覗かせる、氏独特の意地悪かつ絶妙な人物&時事批評もスパイスとして極上の味わい。何度も言いますが、こんな贅沢な逸品もないのです。
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