書評
『文字の消息』(書肆侃侃房)
文字が降る幻想的な世界
文字が降ってくる町に住んでいる夫婦からの書簡が小説を構成している。え? 文字が降ってくるって? と読者は思われるだろう。そんな疑問などどこ吹く風。小説の中で、そして小説の中の手紙の中で、どんどんと文字は降り積もり、ついにはある老女の家を押しつぶしてしまう。
そうした限界状況の中でも、人々は、文字を料理の隠し味に使ったり、たとえば「倫」という文字が形を崩さずに紫陽花の枝のうえに降り積もっているのを、そっと収集したりもするのだ。
手紙が何の目的で書かれているかは読んでのお楽しみ。著者の澤西祐典の持つ、幻想小説の王道とも言える世界を味読されたし。
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