書評

『大学の使命を問う』(藤原書店)

  • 2025/11/11
大学の使命を問う / 石井 洋二郎
大学の使命を問う
  • 著者:石井 洋二郎
  • 出版社:藤原書店
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(240ページ)
  • 発売日:2025-08-27
  • ISBN-10:4865784683
  • ISBN-13:978-4865784688
内容紹介:
同世代の約6割が大学に進学し、大学入学そのものへのハードルはますます低くなる一方、情報伝達の手段も経路も多様化している現代において、かつての教養主義の大学イメージは、現実の若者のあ… もっと読む
同世代の約6割が大学に進学し、大学入学そのものへのハードルはますます低くなる一方、情報伝達の手段も経路も多様化している現代において、かつての教養主義の大学イメージは、現実の若者のありようから、もはや大きくかけ離れている。

他方で、1990年代以降の教養課程廃止の趨勢から、国立大学の独立行政法人化を経て、大学における「教養」のあり方も、重視される専門領域も大きく変質し、さらには、毎年公表される国際的な大学ランキングなるものによって、日本の大学の「地盤沈下」がまことしやかに報道される。

今、日本の大学は、一体どんな危機に直面しているのか。その危機に向き合うなかで、大学が真に重視すべきミッションとは何か。

40年以上にわたって教育および管理運営の立場から大学という場に携わってきた著者が、「教養」のあり方の再定義、文系軽視への警鐘、学長選考と大学・学問の自治といったさまざまな切り口から、今こそ大学が手放してはならない「使命」とは何かを問う。

目次
まえがき

Ⅰ 大学は危機にあるのか
Ⅱ 大学はどのようにして生まれて成長してきたか
Ⅲ 「教育」はどのように変化してきたか
Ⅳ 「研究」にはどのような問題があるのか
Ⅴ 「管理運営」が抱えている課題は何か
Ⅵ 未来の「学生」たちへ
付 深く迷い、高く跳べ
熱き血潮に触れよ

あとがき
参考文献
かつて「知の殿堂」とよばれた大学だが、陰ながら「文系学部は廃止せよ」とまでささやかれるほど落ちぶれたのだろうか。たしかに現実の社会のなかで、理系の学問は実用化され、世の中で役立っていることは自明である。とはいえ、理系の方々から「文系も重要です」とか「文系だって役に立ちます」という言葉が出れば、違和感が残る。「も」や「だって」の言外には、どうやら「理系/文系」の図式と「男/女」の図式とが相似形をなすとは著者の鋭利な感性が浮きぼりになる。

しばしば欧米の大学は「入りやすく出にくい」が、日本の大学は「入りにくく出やすい」と言われる。無事入学した学生は4年間ほとんど勉強もせず卒業する。やりたいことを見つけて頑張るという心構えが育たないのだ。この現状をどのように改革していくかが今後の大学教育の眼目になるのだが、この歴然たる事実があまりにも等閑(なおざり)にされている。

冷静に事実を観察し、批判的に真実を感知する。その姿勢を養うことが今も大学の使命にちがいない。教育・研究・行政の現場にあった著者ならではの議論、だからこそ説得力がある。
大学の使命を問う / 石井 洋二郎
大学の使命を問う
  • 著者:石井 洋二郎
  • 出版社:藤原書店
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(240ページ)
  • 発売日:2025-08-27
  • ISBN-10:4865784683
  • ISBN-13:978-4865784688
内容紹介:
同世代の約6割が大学に進学し、大学入学そのものへのハードルはますます低くなる一方、情報伝達の手段も経路も多様化している現代において、かつての教養主義の大学イメージは、現実の若者のあ… もっと読む
同世代の約6割が大学に進学し、大学入学そのものへのハードルはますます低くなる一方、情報伝達の手段も経路も多様化している現代において、かつての教養主義の大学イメージは、現実の若者のありようから、もはや大きくかけ離れている。

他方で、1990年代以降の教養課程廃止の趨勢から、国立大学の独立行政法人化を経て、大学における「教養」のあり方も、重視される専門領域も大きく変質し、さらには、毎年公表される国際的な大学ランキングなるものによって、日本の大学の「地盤沈下」がまことしやかに報道される。

今、日本の大学は、一体どんな危機に直面しているのか。その危機に向き合うなかで、大学が真に重視すべきミッションとは何か。

40年以上にわたって教育および管理運営の立場から大学という場に携わってきた著者が、「教養」のあり方の再定義、文系軽視への警鐘、学長選考と大学・学問の自治といったさまざまな切り口から、今こそ大学が手放してはならない「使命」とは何かを問う。

目次
まえがき

Ⅰ 大学は危機にあるのか
Ⅱ 大学はどのようにして生まれて成長してきたか
Ⅲ 「教育」はどのように変化してきたか
Ⅳ 「研究」にはどのような問題があるのか
Ⅴ 「管理運営」が抱えている課題は何か
Ⅵ 未来の「学生」たちへ
付 深く迷い、高く跳べ
熱き血潮に触れよ

あとがき
参考文献

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2025年11月1日

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