書評
『生きているのはひまつぶし 深沢七郎未発表作品集』(光文社)
すこぶるカッコいいエッセイ
深沢七郎について語ることができるなんて、思ってもみなかった。そもそも深沢七郎の文章がまだ未発表のまま残っているなんて、想像もしなかった。でも、未発表原稿は存在し、こうして単行本が出た。生きているといいことがあるもんだ。エッセイである。タイトルも断然カッコいいが、中身もすこぶるカッコいい。たとえば「わが享楽の人生の道」と題された文章がある。セックスについてあれこれ考えるのだが、最後に唐突にニワトリの話になる。卵をとるためメスばかり放し飼いにしていた。放し飼いの庭に生えている草を刈り取るために立鎌を持って入っていき、誤って鎌がニワトリの背中にさわったことがあった。そうすると、そのニワトリが地に這(は)いつくばって両羽根を拡(ひろ)げたという。「上に乗るのを待つ体勢」なのだった。
深沢は、セックスのない生きものの世界は殺生なので、ニワトリを飼うのを止(や)める。ふいにそんな話が挟みこまれて、エッセイも終わる。ジンとする。
それから、裏表紙を含め、丁寧な造本と、貴重な写真が嬉しい。深沢への愛に溢(あふ)れた編集者の意志が見事に生きている。
【文庫版】
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