書評
『ナンバーワン・コンストラクション』(新潮社)
聖性の織り込みに挑む
鹿島田真希の最新作。若い建築史のS教授。自分は小説を書きたいのだと明言しながらもS教授の研究室に通うことになるM青年。非常勤のN講師。S教授が思いを寄せる少女などなど、様々な人間がくっついたり離れたりを繰り返す。いろんな化学物質が触媒の作用によって変化を起こす実験のような小説だ。だが、彼らの起こす反応にはきちんとした下敷きがある。それは聖なるものをめぐる理論だ。アブラハムとイサクの逸話に自分を重ね合わせたり、愛が終わり、肉体が滅んだ後の復活の可能性を考えたり……。面倒な話ではない。過剰な装飾を剥(は)ぎ取った文体で綴(つづ)られる小説は、描写や説明から解放されて、テンポのよい会話を前面に押し出しながら進んでいく。
それにしても鹿島田の変貌(へんぼう)ぶりには毎回驚かされる。『二匹』というデビュー作の荒唐(こうとう)無稽(むけい)ぶりから、『白バラ四姉妹殺人事件』や『六〇〇〇度の愛』といった端正な小説へ。そして本作では、聖性をどう小説に織り込んでいくかという困難なテーマに挑んでいる。今回、惜しくも芥川賞は逃したけれど、彼女にしか書けない小説。進むべき道は間違っていない。
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