書評
『カミュ『よそもの』きみの友だち』(みすず書房)
知的ゲームのような展開
アルベール・カミュの『異邦人』は二十世紀を代表するフランス小説。日本でも窪田啓作訳で親しまれてきた。「きょう、ママンが死んだ」で始まる不条理文学の金字塔だが、決して難解なわけではない。フランス語もむずかしくはない。頑張れば大学で一年フランス語を勉強したくらいの学力でなんとか最後まで読み通せると思う。たぶん。でも、いろんな事情があって難解で接近しがたい感じがあった。それを乗り越えたい。トゥーサンやウエルベックの翻訳で知られる野崎歓さんも、たぶん同じ感想を持っていたはずだ。だから、野崎さんは『異邦人』を「よそもの」と訳してみた。身近な存在としてムルソーを理解するというよりも、ごく普通にそこにいる理解しがたい他者として、ムルソーを捉(とら)えようとしている。
だからこの本には最初に『よそもの』の抄訳が掲げてあり、その後、その翻訳を下敷きにした野崎さんの授業が始まるという趣向。授業といっても堅苦しい理論を振り回すのではなく、ムルソーという主人公を徹底して「よそもの」として考える知的なゲームのように話は進む。目からウロコが落ちるような話がいっぱいだ。
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