書評
『塔の中の女』(講談社)
暴れ馬のような奔放な想像力 ★★★★☆ 読みごたえたっぷり、お薦め
新人作家である。一読、著者の奔放な想像力には魅力がある、と感じた。放っておくとどこまでも跳ね続ける暴れ馬のような想像力を、この作家は飼っている(ALL REVIEWS事務局注:本書評執筆時期は2011年10月)。登場人物の名は、エレクトラとオレステス。ギリシャ古典悲劇の傑作、アイスキュロスの『オレステイア』を踏まえている。このあたり勇気を感じる試みだ。
いちおうの主人公は、オレステス。ロードムービー風に各所を移動し、そこで珍妙な出来事や生物に出会う。最後の最後、表題の「塔の中の女」との出会いもある。彼女は本当に母親なのか? もしそうなら、オレステスとエレクトラ、つまり兄と妹の手で殺されてしまうのか? あとは読んでのお楽しみ。
全面的に小説の出来に拍手を送るわけではない。理解不能と思われるところも、ないではない。
だが、このくらいの冒険をしなければ、小説を書く意味なんてないんじゃないだろうか? 小説は冒険者の登場をいつも待っている。確実に言えるのは、この小説に備わっているエネルギーは尋常ではない、ということだ。その一点だけでも、私は間宮緑という作家の才能に一票を投ずる。
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