書評
『アイの物語』(KADOKAWA/角川書店)
トヨザキ的評価軸:
◎「金の斧(親を質に入れても買って読め)」
「銀の斧(図書館で借りられたら読めば―)」
「鉄の斧(ブックオフで100円で売っていても読むべからず)」
数百年後の未来。映画『ターミネーター』よろしく、地球上は機械によって支配されていて、わずかに残った人類はアンドロイドへの憎しみを語り継いでいます。主人公は、各地のコロニーを回っては人類の栄枯の物語を人々に語り伝えている〈僕〉と、そんな彼に二十世紀末から二十一世紀初頭にヒトの書いた物語を読んできかせる美しいアンドロイド・アイビス。アイビスが語る七つの物語の合間に、〈僕〉とアイビスの会話を綴った「インターミッション」をはさんだ構成になっているこのSF小説は、オデが帯に寄せた推薦文をそのまま引いて恐縮なんですけども、地球の不完全な王・人類のためにAIというシェヘラザードが語り継ぐ二十一世紀の千夜一夜物語になっているんですの。
『スタートレック』のような宇宙船の物語を、リレー小説として書き継ぐ同好会のメンバーが起こした殺人事件。仮想空間でのボーイ・ミーツ・ガールの物語。育成型人工知能キャラクターと少女の友情。銀河文明圏を遠く離れた〈この世の果て〉で終わりのない監視を続けている人工知能と、ブラックホールに突入するためにやってきた女性ダイバーの交流。変身美少女戦士が活躍する世界と、それを生みだした現実世界の遭遇。介護用アンドロイドの成長。戦闘用アンドロイドとして誕生したアイビス自身の物語。
七つの物語を読み進むにつれ、それらをアイビスから聞かされている〈僕〉同様、読者は少しずつ自分が何者であるかを知ることになる、その過程が深い感動を生むんです。不完全ゆえに悪をなし、不寛容ゆえに自分とは異なる者を排除し、戦争や環境破壊によって地球を荒廃させていく一方で、たくさんの美しい夢や物語を紡いできた人類。〈僕〉とアイビスの最後の対話を読み終えた時、胸にこみ上げてくる感動を押さえることができないオデなんでしたの。で、間違いなく、皆さんもそうなってしまうんですの。今日び、SFだからと闇雲に排除するようなカチンコチン頭の御仁は、まさかおりますまいが、排除したら、アレよ、エンガチョよ。
そゆこと。この言葉に共感できる人だけに読んでいただければいいや。一緒に感極まろ!
【この書評が収録されている書籍】
◎「金の斧(親を質に入れても買って読め)」
「銀の斧(図書館で借りられたら読めば―)」
「鉄の斧(ブックオフで100円で売っていても読むべからず)」
不完全な人類のためにAIが語り継ぐ千夜一夜物語
おーんおーん。鬼の目にも涙だよお。ケモノ小説&ケモノ映画以外では決して泣かない冷血漢が泣いちゃったよお。しかも、フツーに感動して泣いちゃったんだよお。何に? 山本弘の『アイの物語』に。数百年後の未来。映画『ターミネーター』よろしく、地球上は機械によって支配されていて、わずかに残った人類はアンドロイドへの憎しみを語り継いでいます。主人公は、各地のコロニーを回っては人類の栄枯の物語を人々に語り伝えている〈僕〉と、そんな彼に二十世紀末から二十一世紀初頭にヒトの書いた物語を読んできかせる美しいアンドロイド・アイビス。アイビスが語る七つの物語の合間に、〈僕〉とアイビスの会話を綴った「インターミッション」をはさんだ構成になっているこのSF小説は、オデが帯に寄せた推薦文をそのまま引いて恐縮なんですけども、地球の不完全な王・人類のためにAIというシェヘラザードが語り継ぐ二十一世紀の千夜一夜物語になっているんですの。
『スタートレック』のような宇宙船の物語を、リレー小説として書き継ぐ同好会のメンバーが起こした殺人事件。仮想空間でのボーイ・ミーツ・ガールの物語。育成型人工知能キャラクターと少女の友情。銀河文明圏を遠く離れた〈この世の果て〉で終わりのない監視を続けている人工知能と、ブラックホールに突入するためにやってきた女性ダイバーの交流。変身美少女戦士が活躍する世界と、それを生みだした現実世界の遭遇。介護用アンドロイドの成長。戦闘用アンドロイドとして誕生したアイビス自身の物語。
七つの物語を読み進むにつれ、それらをアイビスから聞かされている〈僕〉同様、読者は少しずつ自分が何者であるかを知ることになる、その過程が深い感動を生むんです。不完全ゆえに悪をなし、不寛容ゆえに自分とは異なる者を排除し、戦争や環境破壊によって地球を荒廃させていく一方で、たくさんの美しい夢や物語を紡いできた人類。〈僕〉とアイビスの最後の対話を読み終えた時、胸にこみ上げてくる感動を押さえることができないオデなんでしたの。で、間違いなく、皆さんもそうなってしまうんですの。今日び、SFだからと闇雲に排除するようなカチンコチン頭の御仁は、まさかおりますまいが、排除したら、アレよ、エンガチョよ。
理解できないものは退けるのではなく、ただ許容すればいいだけのこと。それだけで世界から争いは消える。/それが i だ。
そゆこと。この言葉に共感できる人だけに読んでいただければいいや。一緒に感極まろ!
【この書評が収録されている書籍】
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