書評

『聖地Cs』(新潮社)

  • 2026/06/13
聖地Cs / 木村 友祐
聖地Cs
  • 著者:木村 友祐
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:単行本(195ページ)
  • 発売日:2014-08-29
  • ISBN-10:410336131X
  • ISBN-13:978-4103361312
内容紹介:
土Cs、草Cs、木Cs、水Cs、空気Cs、牛Cs、そして──、わたしCs。新鋭の渾身作。わたしは、もう、イヤなんです。死なせるのはもう。だから、なかったことには絶対しない──。原発事故による居住制… もっと読む
土Cs、草Cs、木Cs、水Cs、空気Cs、牛Cs、そして──、わたしCs。新鋭の渾身作。わたしは、もう、イヤなんです。死なせるのはもう。だから、なかったことには絶対しない──。原発事故による居住制限区域内で被曝した牛たちを今も飼い続けている牧場で、東京からボランティアに来た女性が見たものは──。原発事故問題を真正面から見つめて真摯に描いた表題作と「猫の香箱を死守する党」の二篇を収録。

牛と人、被災地での交感描く

東京からボランティアにやってきた若い女性が主人公。彼女は、福島第1原発から14キロのところにある牧場「希望の砦(とりで)」で牛たちの世話をする。その3日間を描いた小説だ。居住制限区域内の牧場には、360頭の牛がいる……。

東日本大震災の後、少なくない量の「震災後文学」が書かれてきた。小説家たちは想像力を駆使してきたと思う。

木村には、他の小説家たちと明らかに違うところがある。動物との交感の度合いが格段に高いという点だ。

牛の眼、排泄(はいせつ)物、汚泥。主人公はセシウムにまみれているはずの牧場の中で、ひたすら牛の世話に没頭する。

牧場に集まる人間たちは、それぞれ主張を抱えている。声高に反原発を唱える者、黙って他県から通ってくる者、居住制限区域の動物に触れに来るアイドル……。主人公も、夫との確執を抱えている。

だが、この小説を圧倒的なものにしているのは、牛の鳴き声と、人間の発する唸(うな)り声とが同一化するところだ。小説の終盤、牛舎前の泥の沼にはまり込んだ主人公が発する声の存在感に激しく揺さぶられた。
聖地Cs / 木村 友祐
聖地Cs
  • 著者:木村 友祐
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:単行本(195ページ)
  • 発売日:2014-08-29
  • ISBN-10:410336131X
  • ISBN-13:978-4103361312
内容紹介:
土Cs、草Cs、木Cs、水Cs、空気Cs、牛Cs、そして──、わたしCs。新鋭の渾身作。わたしは、もう、イヤなんです。死なせるのはもう。だから、なかったことには絶対しない──。原発事故による居住制… もっと読む
土Cs、草Cs、木Cs、水Cs、空気Cs、牛Cs、そして──、わたしCs。新鋭の渾身作。わたしは、もう、イヤなんです。死なせるのはもう。だから、なかったことには絶対しない──。原発事故による居住制限区域内で被曝した牛たちを今も飼い続けている牧場で、東京からボランティアに来た女性が見たものは──。原発事故問題を真正面から見つめて真摯に描いた表題作と「猫の香箱を死守する党」の二篇を収録。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

初出メディア

日本経済新聞

日本経済新聞 2014年9月24日

ALL REVIEWS 書評講座(オンライン受講) ≫オンラインで参加する
現地満席|オンライン参加OK
「読む」側から、 「書く」側へ。
オンライン参加OK/過去回アーカイブ付。
全12回・途中申込OK。豪華講師陣の書評講座、開催中。
  • 週に1度お届けする書評ダイジェスト!
  • 「新しい書評のあり方」を探すALL REVIEWSのファンクラブ
関連記事
陣野 俊史の書評/解説/選評
ページトップへ