書評

『鉄の胡蝶は』(講談社)

  • 2026/06/20
鉄の胡蝶は / 保坂 和志
鉄の胡蝶は
  • 著者:保坂 和志
  • 出版社:講談社
  • 装丁:単行本(368ページ)
  • 発売日:2026-04-13
  • ISBN-10:4065420016
  • ISBN-13:978-4065420010
内容紹介:
「やれたかも」と「やりそこなった」は同じか? 執着のないはずの沢井綾子にこだわるのはなぜなのか? 下世話な考察から始まる摩訶不思議な小説は、読者を壮大な迷宮へと誘い込む。船乗りの父と… もっと読む
「やれたかも」と「やりそこなった」は同じか? 執着のないはずの沢井綾子にこだわるのはなぜなのか? 下世話な考察から始まる摩訶不思議な小説は、読者を壮大な迷宮へと誘い込む。船乗りの父と鎌倉の思い出、猫に教えてもらった知恵の数々、フロイト、小津安二郎、カフカ、サザンにビートルズ。1960年代から現代まで、記憶と意識と思考が入り乱れて織りなされる、著者の代表作にして最高到達点。〈21世紀のカフカ〉が贈る、果てしなき物語。
長編小説(なのか?)。エッセイのようにも、私小説のようにも読める。最初のほうに、対談相手から「攻撃的」と評されるエピソードが出てくる。「小説というジャンルに対して攻撃的」「個々の作品を書くやり方が攻撃的」という褒め言葉らしい。語り手は必ずしも納得していないのだが、この小説も攻撃的だ。

文体が尋常ではない。ときどき句読点の位置が奇妙。ところが、声に出して読んでみると違和感がない。確かにぼくたちは、日ごろこのように考え、話している。とはいえ、意識の流れを自動的に筆記しているのでもない。やはりこれは小説だ。

さまざまなエピソードが出てくる。中心となるのは語り手が十代、二十代だったころ、鎌倉での思い出。ひとつの記憶から別の記憶がよみがえり、さらにまた別の記憶へとつながっていく。まるで稲村ケ崎で波に乗るように。もちろん猫や犬についての記憶も。小学校の同級生だった女性が何度も登場する。「やれたかも」などという、いささか下品な話もある。これは保坂和志版「ヰタ・セクスアリス」でもあるのか。

読むうちに読者も刺激され、記憶がよみがえってくるだろう。
鉄の胡蝶は / 保坂 和志
鉄の胡蝶は
  • 著者:保坂 和志
  • 出版社:講談社
  • 装丁:単行本(368ページ)
  • 発売日:2026-04-13
  • ISBN-10:4065420016
  • ISBN-13:978-4065420010
内容紹介:
「やれたかも」と「やりそこなった」は同じか? 執着のないはずの沢井綾子にこだわるのはなぜなのか? 下世話な考察から始まる摩訶不思議な小説は、読者を壮大な迷宮へと誘い込む。船乗りの父と… もっと読む
「やれたかも」と「やりそこなった」は同じか? 執着のないはずの沢井綾子にこだわるのはなぜなのか? 下世話な考察から始まる摩訶不思議な小説は、読者を壮大な迷宮へと誘い込む。船乗りの父と鎌倉の思い出、猫に教えてもらった知恵の数々、フロイト、小津安二郎、カフカ、サザンにビートルズ。1960年代から現代まで、記憶と意識と思考が入り乱れて織りなされる、著者の代表作にして最高到達点。〈21世紀のカフカ〉が贈る、果てしなき物語。

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2026年6月6日

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