すぐ役に立つものは すぐ役に立たなくなる
- 著者:荒俣宏
- 出版社:プレジデント社
- 装丁:単行本(ソフトカバー)(328ページ)
- 発売日:2025-03-31
- ISBN-10:4833440733
- ISBN-13:978-4833440738
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わたしは好きなことだけしているわけでもなかった。正直にいえば、どんな仕事もやってみるとおもしろくなるのだ。大学卒業後、就職は魚類に興味があったから水産会社に勤めたのだが、配属されたのは漁船に資材を詰めこむ部署で、その後は思いもよらぬコンピュータ室だった。3日で辞めようと思ったが、4日も頑張ってみたら、デジタル機器のおもしろさを発見して10年近く勤務した。そこで知ったのは、『来たバスには乗ってみろ』という至言だった。やれば、何でもおもしろくなる。
興味のないものを興味あるものに変える勇気は『やってみる』精神にある。物事は、試すという縁があった場合に、非常な興味を抱かせるものだから。
仏教の教えによると、物事に関係が生じるきっかけは、『因』である。因とは関係が生まれるきっかけであり、縁という引力みたいな作用がここに変化を生みだすこととなる。(中略)われわれの世界は『因と縁と結果』でできあがっているから、『因縁』の世であり、この『因縁』を取り除いたら『我』と呼ばれる確かな存在は無に帰するから『無我』となる。という仏教の語源を知れば、なぜ『縁談』ということばがあるのかも理解できてくる。つまり、縁もゆかりもなかった男女が、縁の力によって夫婦になることから、縁談なのだ。
関心の幅を広げるためには、宝探しをするつもりで、いろいろなことに触れることが大切だ。中でも、誰も手をつけないようなものには、あえて触れてみることをおすすめする。なぜなら、そうした不人気なものの中にこそ、大きな宝が隠されているケースが非常に多いからだ。すでにお話しした因縁と因果の説を思いだしていただきたい。恋愛結婚ではなく、見合い結婚、すなわち知らぬ者同士の縁談を仕組むこと。そして、この因縁説をいちばん有効に発揮させるには、他人が選ばないような相手とあえて縁組することなのだ。わたしは、これを実人生でも実践してお見合い結婚をしたが、思ってもみないベスト・パートナーに恵まれたと思っている。
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